三位一体の改革とは


【三位一体の改革とは】

日本の統治機構は、国、都道府県、市町村という3層制をとっています。

そして、何かにつけ国が関与するというか、口出しをするというか、
都道府県や市町村のやることに関与してきたというのが実態です。

ただ、それは必ずしも悪いことではなくて、積極的に評価することもできます。

例えば、何らかの福祉事業について、国が一定の水準を定め、それを全国に広げるために
都道府県や市町村に補助金を出して事業をさせるという形がとられてきました。
そして、それが全国的に達成されると、次にもう一段高い水準を定めて、同じ方法でもって、
その事業を全国に広めていくということをしてきました。
それは、今日のように、全国の何処に行っても同じようなサービスが受けられるという、
いわゆるナショナルミニマムを達成したという功績があります。

今日の豊かな国を作ったとも評価されています。

ところが、これからも、そのようなことが可能かと言うと、それは無理なのです。
右肩上がりに経済成長していた時代は、そういう方法が優れていたという意義のあるものだったのですが、
今日のような成熟社会の中では、かえって弊害があるといえます。

それは、いたずらに財政需要を増やし、国や自治体の赤字の元凶になっています。
さらには、全国的に個性のない状況を作り出しているということです。

それを打破するためにも、地方分権、地方の時代を作り上げていく必要があります。
地方分権、地方の時代と言われて久しいのですが、今日に至るまで実現しておりません。

法律は変わり、国の命令を受けて、国に成り代わって自治体のやっている仕事というのは、
平成12年3月末をもって消滅しています。

今は、自治体のやっている仕事は全て自治体の仕事ということになっていますが、現実はどうか。
あいも変わらず、国に頼っているのが実態です。

それは、制度が変わっても人々の気持ちが直ぐには変わらないこと、
国民の多くが何かにつけて、何かあると国に頼るという実態があるからだと思います。

世の中が単純であった頃は、
霞ヶ関の役人が企画して都道府県や市町村にやってもらえば良かったのですが、
今日のように複雑にして多様化した社会の中では、
霞ヶ関の役人では本当に国民の必要なことの全てを企画することは不可能です。

住民と直接接している市町村にこそ、住民のニーズを把握してもらい、
市町村のお金で市町村自らが実施するという体制を整える必要があります。

そのためには、市町村に権限を与え、財源を与え、
市町村が出来る限り国の干渉を受けることなく実施できる体制を整える必要があります。
100の補助金をもらって、国から様々な干渉を受けるよりも、
70でも良いから、市町村が自由に使える金を持つほうが、
結果的に無駄のない本当に必要な仕事ができます。

市町村は固定資産税住民税などの税金を徴収しています。
それでもって、福祉や教育、消防、土木その他諸々の仕事をしています。
ところが、どっこい、自分達で集めた税金だけで足りているのは、
全国3200団体のうち、わずか100団体ほどです。

残りの3100団体は、全くお金が足りないため、
その穴埋めのために、国から交付金(正確には、地方交付税交付金)をもらっています。
その総額は、年によってことなりますが、今年度だと、全国で18兆円にも上っています。

もう少し申しますと、この交付金は、
国の税金である所得税法人税酒税たばこ税消費税の一定割合とされており、
そのとおりに計算すると今年度は、11兆円しかありません。
そこでなんだかんだと理屈をつけて増額をしているのです。
実際には、それだけでも足りないため、将来交付金で穴埋めするという約束のもとに、
とりあえず6兆円を借金してもらっているような状況です。

住宅ローンなら良いのですが、飲み食いの金を借金してはいけません。
自治体は、道路整備や施設整備だといって借金をしていますが、それは良いとしても、
単純な飲み食いのために6兆円も借金するというのは異常事態です。

それを解消するための行革努力が必要です。
更には、なんだかんだと理屈をつけて増額するにも限度があります。
この交付金の制度は、地域によって異なる経済力というか財政力の強弱を穴埋めして、
全ての団体で必要なことができるようにするものとして高く評価できます。
ところが、それが逆に個性のない自治体をつくっているという批判もあります。
総務省は決してそうではないと言っていますが、今日的には見直すべきものは見直す必要もあるわけです。

それと、もう1つは、税制の見直しです。
国の税金自治体の税金を比べると、国が多くて自治体は少なくなっています。
ところが、仕事で使っている金は自治体の方が多くなっています。
そうであるならば、
せめて国と自治体の税金を1対1くらいにしても良いではないかと思うわけです。
自治体の税金だけでは足りないことから、国の交付金で穴埋めするということが続けば、
自治体は営業努力というか税収の確保に努力しなくなります。
他人の金だからと無駄使いしたくなったりします。
言葉は悪いですが、どうしても、そういう傾向が出ます。
そこで、多くの自治体が自分の税金だけでやっていけるような体制を整えて、
交付金をもらう自治体は極力減らしていくという改革が必要になるのです。

それが三位一体の改革の本質です。


ただ、こういう改革だけではまだ足りません。
自治体の権限を強化し、自治体の税金を増やし(国の税金は、その分減らします)、
補助金を減らし、交付金を減らしても、自治体が自主的にキチンと仕事ができるようになっていなければ、
何の意味もありません。

現在の市町村は規模の小さいものが実に多く、役場の職員も少ないものになっています。
世の中に五万と法律があり、毎年多くの改正があります。
また国民の求めることは実に多様です。
そういう実態のなかにあって、現在の自治体では、
とても仕事をキチンとこなしているという評価にはならないわけです。
小さい団体ほど、1人の人間が多種類の仕事をしています。
ということは、専門的な仕事は難しいのです。勉強もしきれません。
そこで、合併をしてもらい、1人1人が相当程度、
専門的な立場で仕事ができるような体制を整える必要があるわけです。

合併を進めれば、いずれは役場の職員の総数は減っていきます。
小規模団体であればあるほど、住民に占める公務員の数が多くなります。
ということは、人口規模が大きくなればなるほど、公務員の数は相対的に少なくなります。
人件費にあてる税金が少なくて済みます。

合併して、お金の係らない体質にするとともに、
1人1人が専門的な立場で仕事ができるようにし、
国や都道府県から権限を移譲し、財源を移譲し、交付金と補助金を減らして、
自治体の自由度を高め、真に国民が求める仕事ができる体制にすること、
それこそが、
三位一体の改革
・市町村合併・地方分権・地方の時代の到来となるわけです。

そういう構造改革、21世紀全般を通じて耐えうるような行政体制を整えたいということです。

市町村に権限が移譲されれば、現在の都道府県はそのまま存続する必要はありません。
そこで、都道府県合併も視野に入ってきました。
さらには道州制ということも議論されるようになってきました。
そういう大きな大きな改革の中での市町村合併なのです。



三位一体の改革の具体の中味

小泉内閣発足間もない頃の平成13年6月に
「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」が閣議決定されています。
この方針は、通称「骨太の方針」と呼ばれています。

この中では、次のようなことが書かれています。

「個性ある地方」の自立した発展と活性化を促進することが重要な課題である。
 このため、すみやかな市町村の再編を促進する。

・「行政サービスの権限を住民に近い場で」を基本原則として、
 国庫補助負担金を整理合理化するとともに、
 国の地方に対する関与の縮小に応じて、地方交付税を見直す。

・特定の事業について地方の負担意識を薄める仕組みを縮小するなど、制度の簡素化を行う。
 また、地方行財政の効率化などを前提に、地方税の充実確保により、
 社会資本整備・社会保障サービス等を担う主体として
 地方行政の基本的な財源を地方が自らまかなえる形にすることが必要である。

続いて、平成14年6月には、「骨太の方針第2弾」が閣議決定されています。

その中には、次のようなことが書かれています。

国庫補助負担金交付税税源移譲を含む
 税源配分のありかたを三位一体で検討し、
 それらの望ましい姿とそこに至る具体的な改革工程を含む改革案を、今後1年以内にまとめる。

・この改革案においては、国庫補助負担金について
 「改革と展望」の期間中に、数兆円規模の削減をめざす。
 同時に地方交付税の改革を行う。
 9割以上の自治体が交付団体となっている現状を大胆に是正していく必要がある。

国庫補助金は、現在では年間18兆円ほどあるときいています。
それを数兆円減らすということです。
数兆円とは何兆円なのかははっきりしませんが、
数兆円というからには、常識的には、4〜7兆円ほどかなと思います。

総務大臣は、昨年、5兆5千億円削減したいと提案しています。
そして、それと同額を税源移譲してほしいと提案しました。

具体的には、国の所得税の一部自治体の住民税に振り替えること、
国の消費税を1%減らして3%とし、地方消費税を1%増やして2%とすることにより、
これを実現したいという提案です。

最近話題になっているのは、4兆円の国庫補助金を減らし、
自治体が義務的にやっていた事業の補助金は全額を自治体に移譲し、
義務的でないものについては8割を移譲するということです。
総務大臣の提案からは少しずれていますが、評価すべき方向に行っているように思います。

新聞紙上には様々書かれていますが、まだ決定したわけではありません。
国には、地方制度調査会、地方財政審議会、財政制度等審議会、地方分権改革推進会議とかがあって、
それぞれの立場で議論してきましたし、
大きなところでは、経済財政諮問会議があって国の大きな方針を議論しています。

最終的には、閣議という場で決定することになりますが、新
聞情報でしかありませんが、来週中には決定するといった話があります。

交付税についても自治体の改革に合わせて見直しをしていくことになります。
むやみな増税は駄目むやみなサービス切り下げも駄目
しからば、役所の改革が必要です。

そういう大きな改革としての
三位一体改革が今本気で議論されているということです。

文責:石川俊男